
寄与分を主張する相続人への対応法|介護・看護による相続トラブルを防ぐポイント
- 相続手続き(遺産分割・預貯金・不動産)
- 2025/12/12
- 2025/12/12
寄与分とは何か?基本的な仕組みを理解する
寄与分の定義と目的
寄与分とは、相続人のうち特別な貢献をした人に対し、他の相続人よりも多くの遺産を取得できるようにする制度です。被相続人の財産の維持や増加に寄与した相続人に、実質的な公平を図るための仕組みとして民法に定められています。たとえば、長期間にわたり被相続人の介護や看護を無償で行っていた場合などが該当します。寄与分は単なる感情論ではなく、客観的な証拠や寄与の程度に基づいて判断されます。近年は「介護による寄与分」を巡る相続トラブルが増えており、寄与分の正確な理解が円満な遺産分割の第一歩となります。
寄与分が認められる典型的なケース
寄与分が認められる代表的な例は「介護・看護型」です。被相続人の生活支援や身体介助を長期間にわたり行った場合、財産の維持や支出の抑制に寄与したと評価されます。その他にも、被相続人の事業を支援し、収益の向上に貢献した「事業従事型」や、財産管理を長年任され適切に運用した「財産管理型」などがあります。一方、同居や短期間の手伝いといった一般的な家族の範囲内の行為は寄与分と認められにくいのが実情です。

寄与分が認められる条件と判断の目安
特別の寄与と評価されるための要件
寄与分が認められるには、単なる家族の支援を超える「特別の寄与」と評価される必要があります。実務上、特に重視されるのは
①介護・看護の期間が1年以上継続していること、
②入院中や施設入所中ではなく自宅で介護を行っていたこと、
③被相続人が要介護2以上の状態であったこと、の3点です。
これらの要件を満たしていれば寄与分が認められる可能性が高まりますが、実際には介護の内容や経済的効果など、複合的に判断されます。
寄与分が認められにくいケースとは
一方で、寄与分として評価されにくいケースもあります。たとえば、同居して生活費を分担していたことや、短期間の介護・看護は「通常の扶養義務の範囲内」と判断されやすいですし、介護サービスや施設を利用していた場合も、実際に行った支援の程度が軽ければ寄与分とは認められません。特に注意すべきは、「感情的に大変だった」という主観的主張ではなく、どの程度財産の維持や増加に寄与したかが判断基準となる点です。寄与分を巡る争いを避けるためには、感情ではなく法的根拠に基づく冷静な対応が求められます。
寄与分の主張があったときの実践的な対応方法
寄与分を主張されたときにまず行うべき調査と確認事項
相続人から寄与分を主張された場合、まず行うべきは「事実関係の確認」です。介護・看護の内容や期間、被相続人の状態を客観的に把握しましょう。具体的には、介護認定資料、医療記録、介護日誌などを収集し、実際の支援内容が寄与分として評価できるかを検討します。証拠が不足しているまま話し合いを進めると、感情的な対立に発展しやすくなります。また、被相続人が施設に入所していた期間や外部サービスの利用状況も重要な確認ポイントです。これらを冷静に整理することで、正当な相続分を守るための土台ができます。
専門家へ相談するメリットと依頼のタイミング
寄与分を巡る相続トラブルは、家族間の感情が絡むため冷静な話し合いが難しくなりがちです。こうした場合、弁護士や司法書士など専門家に早めに相談することで、法的根拠に基づいた判断と的確な対応が可能になります。専門家は、寄与分が法的に認められる見込みを分析し、相手方との交渉を代行してくれます。また、第三者が介入することで感情的な衝突を避けられ、心理的負担も軽減されます。特に、相手の主張に納得できない場合や証拠が不十分な場合には、早期相談が解決の鍵となります。
寄与分トラブルを防ぐための事前対策
生前の話し合いと記録の重要性
寄与分を巡る争いの多くは、被相続人について「どれだけ介護したか」が曖昧なまま主張されることから生じます。そのため、生前から家族間で役割分担や支援内容を明確にしておくことが大切です。介護の実施期間や費用負担を記録に残し、定期的に家族で共有しておくと、後の証拠として有効です。また、被相続人の意思を確認しておくことで、将来的な相続トラブルを予防できます。感情的な対立を防ぐためにも、「話し合い」と「記録」をセットで行うことが最も効果的な対策です。
遺言書や専門家の関与によるリスク回避策
相続トラブルを根本から防ぐには、被相続人の生前に遺言書を作成するのが有効です。遺言書に「誰がどのように寄与したか」「その評価をどう反映するか」を明記しておけば、後の争いを最小限に抑えられます。さらに、遺言書作成時に弁護士や行政書士などの専門家が関与すれば、法的に有効な形式で作成でき、相続人間の納得感も高まります。専門家は公平な第三者として家族全体のバランスを考慮し、円満な相続を実現するサポートを行います。
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