相続登記の義務化はいつから?過去分も対象?費用と問題点
- 相続手続き(遺産分割・預貯金・不動産)
- 2022/5/27
- 2022/5/30
不動産の相続登記が義務化!登記しないとどうなる?過去の相続分も?
不動産を相続した場合、不動産の名義変更を行います。
この不動産の名義変更は、法務局に登記の申請を行いますが、これを「相続登記」と言います。
今までは相続登記をしなくてもよかった?なぜ相続登記が義務化に?
相続登記の義務化が話題になっているということは、今までは相続登記はしなくてもよかったのでしょうか?
なぜ相続登記をしない人がいるのでしょう?
相続登記について、今までは相続登記は義務ではなく、相続登記を申請する期限はありませんでした。
相続登記が必要になるケースとしては、
- 相続した不動産を売却するとき
- 相続した不動産を担保に入れてお金を借りるとき(抵当権設定)
など、実際に相続をした不動産を売ったり動かしたりするときに、相続登記での名義変更が必要になるもので、
「すぐに売るつもりはないから、何か動かすときに相続登記をすればいいや」
と考えて、そのまま放置する人も多くいました。
相続登記を放置することによる問題点
相続登記をせずにそのままにして放置をしていると、いろいろな問題点が発生します。
主な問題点としては、以下の2つです。
1.いざ相続登記をしようとしたときに、相続人と連絡がつかなかったり、手間と費用が膨大にかかるリスク
相続登記をせずに、いざ不動産を売却しようとしたときに相続登記を行おうとすると、相続から時間が経っていることにより、相続人と連絡が取れなくなってしまったり、関係性が変わって話がスムーズに進まなかったり、相続人が他界して代替わりしたり、認知症で後見人を選任しなければならなかったり…。
相続が起きてすぐに手続きをしていれば、スムーズに終わっていたものが、そのままにしてしまったことにより、時間も費用も膨れ上がるケースがよくあります。
私たちにご相談いただく事例でも、相続人が20人以上いたり、曾祖父の代から名義が変わっていなかったりというケースなどがあり、手続きに1年以上かかることもよくあります。
2.所有者不明土地や空き家の問題
昨今、日本全体で所有者不明土地の問題や、空き家の問題が大きくクローズアップされており、有効な土地の利用ができないことが、大きな問題となっています。
相続登記がされていないと、登記簿を見ても現在の所有者がわかりません。相続登記が放置されていることが、所有者不明土地問題・空き家問題の原因の一つとなってしまっています。
相続登記の義務化は2024年4月1日(令和6年4月1日)から施行してスタート!
そこで、この問題を解決する方法として、相続登記の義務化がスタートすることになります。
相続登記の義務化の施行日は、2024年4月1日(令和6年4月1日)です。
この相続登記の義務化により、期間内に相続登記をしないと、罰則を受けることになります。
相続登記の義務化の内容は、以下のとおりです。
相続登記をしなければならない期限
相続で自分が不動産を取得したことを知った日から、3年以内に相続登記をする必要があります。
要件は、以下の両方を満たした時からが起算点となります。
- 自己のために相続の開始があったことを知ったこと
- 不動産の所有権を取得したことを知ったこと
起算点は、相続人ごとに異なりますので、それぞれの相続人ごとに計算することになります。
二次相続で不動産を取得した場合は?
二次相続が発生して不動産を取得した場合は、その二次相続で所有権を取得したことを知った時が起算点となります。
(祖父が亡くなって、相続登記がされないまま、父が亡くなって自分が相続した場合など)
相続放棄があった場合は?
なお、相続放棄があった場合は、その相続放棄を知った日から3年以内に相続登記申請をする義務があります。
(兄が亡くなって、兄の配偶者と子どもが相続放棄をして、自分に相続権が回ってきた場合など)
相続登記をしないことによる罰則(過料)
上記の期間内に相続登記をしないと、10万円以下の過料が課せられます。
正当な理由がないのに、相続登記の申請を怠った時は、上記罰則があります。
相続登記の義務化の対象とならない正当な理由とは?
相続登記の義務化で罰則対象とならない正当な理由は、通達等で明確化する予定になっています。
想定されるものとしては、以下のケースがあります。
- 数次相続(2世代以上の相続)が発生して、相続人が多く、戸籍取得や相続人調査に時間がかかるケース
- 紛争があり、遺言の有効性や遺産の範囲などが争われているケース
- 相続人自身に重病等の事情があるケース
過去の相続した分は相続登記の義務化の対象になるの?
過去の相続も相続登記の義務化の対象になります!
相続登記の義務化の改正施行日前に相続が発生していたケースでも、相続登記の義務化の対象となりますのでご注意ください。
すでに相続が発生しており、
「特に売る予定もないから、当面は相続登記はしないでおこう」
と考えていた方でも、相続登記義務化の対象になりますので、早めにご相談ください。
なお、相続登記申請義務の起算点については、相続で自分が不動産を取得したことを知った日からですが、
過去分の起算点は、過去のその時点からではなく、相続登記義務化の法改正の「施行日」が起算点となります。
相続登記の義務化:相続人申告登記とは?
相続登記の義務化の改正の中で、「相続人申告登記」の制度が設けられました(新設)。
相続手続きでは、相続財産(預金・不動産・有価証券など)の分配・遺産分割がなかなか決まらずに時間がかかることもあります。そのような場合でも、相続登記の義務を免れることができるように、この相続人申告登記制度がつくられました。
相続人申告登記とは
相続人申告登記とは、相続人が自ら、登記官に対して、相続人であることを申告する制度です。
申し出を受けた登記官は、審査をして、その相続人の氏名・住所を、職権で登記に付記します。
これにより、登記簿を見れば、相続人の住所・氏名を把握することができるようになります。
申告する内容は、相続登記を申請する義務がある相続人が、登記官に対して、以下の内容を申し出る必要があります。
- 登記上の所有者(所有権登記名義人)に相続が開始したこと
- 自分がその相続人であること
相続人申告登記の注意点
相続人申告登記を行う場合でも、相続登記の申請義務の期限(3年内)に、登記官に申し出をする必要があります。
相続人申告登記の効果は、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。
なお、履行したものとみなされるのは、申し出をした相続人のみとなりますので、ご注意ください。
また、相続人申告登記をした後に、遺産分割の話し合いがまとまった場合は、そこから3年以内に相続登記の申請が必要となります。
相続人申告登記をしたからと言って、その後に相続登記をしなくてもよいということにはなりませんので、ご注意ください。
遺産分割が成立しない場合の相続登記義務化の対応まとめ
遺産分割の成立タイミングにより、相続登記の義務化への対応が異なります。
相続から3年以内に遺産分割が成立した場合
3年以内に遺産分割協議の話し合いがまとまった場合は、期限内に相続登記を申請すればOKです。
相続から3年以内に遺産分割が成立しなかった場合
3年以内に遺産分割協議の話し合いがまとまらなかった場合は、期限内に、相続人申告登記(または法定相続登記)を行う必要があります。
その後、遺産分割協議が成立したら、そこから3年以内に、遺産分割内容での相続登記を申請します。
相続登記の義務化:相続登記の費用
相続登記については、相続の専門家へご相談ください。登記手続きは、司法書士の専門分野になります。
相続登記の手続きの流れは、
- 相続登記の必要書類(戸籍謄本、附票、名寄せ帳、課税明細、資産明細など)
- 相続関係説明図の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 相続登記申請書類の作成
- 法務局へ登記申請
- 権利証の製本
という流れで進んでいきます。
相続登記の費用は、不動産の固定資産評価額によって異なります。
上記の司法書士の手続き費用のほか、
実費として戸籍取得等の実費や、相続による名義変更の登録免許税がかかります(固定資産評価額の約0.4%)。
詳細は、名古屋相続相談所:相続登記の料金プランをご覧ください。
一般的に、名古屋市内の一戸建ての場合ですと、合計で約20万円程度となるケースが多いです。
所有者不明土地の対策:住所変更登記の申請の義務化
所有者不明土地・空き家の発生予防対策について、
今回、相続登記の義務化とあわせて採られる対策についてもご紹介します。
相続登記の義務化と合わせて、住所変更登記の申請義務化の対策がとられることになりました。
住所変更登記(名変)の申請の義務化とは
住所を引越ししたら、住民票の移動を行いますが、登記簿に記載されている住所は、自動的には変更されません。登記簿の住所を変更するためは、住所変更登記(名変登記)を行う必要があります。
そして、この住所変更登記も今まで義務とされていなかったため、住所変更登記がされずにいるケースも多くありました。
それが、所有者不明土地問題の一因ともなっていました。
平成29年の国交省の調査データでは、
所有者不明土地の割合は、全体の22%あり、
そのうち、
- ①相続登記の未了 66%
- ②住所変更登記の未了 34%
というように、相続登記の未了だけではなく、住所変更登記がされていないことによる問題も多くあります。
これについて、住所変更登記の申請義務化により、
所有権の登記名義人が住所等を変更した場合、変更日から2年以内に、変更登記の申請を義務付けることになりました。そして、正当な理由のない申請漏れには、5万円以下の過料が課せられます。
住所変更登記の申請義務化の施行日、その詳細は、まだ決まっていない部分がありますので、また決まり次第、お伝えします。
住所変更:登記官の職権変更制度
また、登記官が他の公的機関から取得した、住所などの情報に基づき、登記官が職権で変更登記をする新たな制度が導入されます(所有権登記名義人が自然人であるときは、申し出が必要)。
これらの制度の詳細は、追って情報発信していきます。
相続登記の義務化:相続登記のご相談・ご依頼は名古屋相続相談所へ
相続登記の義務化は、2024年4月1日(令和6年4月1日)から施行されます。
しかし、過去の相続の分も対象となるため、今まで相続登記をしていなかった方も、相続登記をする必要が出てきます。
相続登記をしない期間が長くなると、相続登記の義務化の問題だけではなく、
いざ相続登記をしようとした時に、さまざまな問題点が発生するリスクがあります。
相続から時間が経っていることにより、相続人と連絡が取れなくなってしまったり、関係性が変わって話がスムーズに進まなかったり、相続人が他界して代替わりしたり、認知症で後見人を選任しなければならなかったり…。
相続が起きてすぐに手続きをしていれば、スムーズに終わっていたものが、そのままにしてしまったことにより、時間も費用も膨れ上がるケースがよくあります。
過去に相続が発生したけど、まだ名義がそのままになっている、相続登記を行っていない、という方は、まずは司法書士へご相談ください。
ご相談お待ちしております。