相続税の節税目的で孫の養子縁組は無効?

相続税対策で孫を養子に

相続税の節税対策として、孫を養子にするということは、一般的にも行われることがあるケースです。
孫を養子にすると、相続税の基礎控除の枠が増えることになります。

※孫への相続については、相続税の2割加算がされる場合があります。
詳細は、孫への相続税は2割加算のページをご覧ください。

このような、相続税対策を目的として孫を養子にする、いわゆる孫養子について、養子縁組が無効なのではないかという裁判が起こされ、最高裁判所での判例が出ましたのでご紹介します。

今回の孫養子の事案

本件についての詳細は、以下のとおりです。
(わかりやすさを優先し、省略して簡易的にしています)

登場人物

  • A 被相続人
  • B Aの長男
  • X Aの長女・次女
  • Y Aの孫(Bの子)

時系列

  • 平成24年4月,Aの自宅に税理士が来る(B・Yとともに)。
    YをAの養子にした場合に、遺産に係る基礎控除額が増えることなどによる相続税の節税効果がある旨の説明を受けた。
  • その後、養親をA、養子をYとする養子縁組が行われた。

Xの主張

この養子縁組は、もっぱら相続税の節税のためにされたものだから無効だ。

Xの主張の理由

民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるから。

(養子縁組の無効)
第802条  縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
1 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。

最高裁の判断

今回の孫の養子縁組は有効

最高裁の理由

相続税の節税を目的として行われた孫の養子縁組事件について、最高裁判所が判断した理由は、以下のとおりです。

養子縁組は,嫡出親子関係を創設するものであり,養子は養親の相続人となるところ,養子縁組をすることによる相続税の節税効果は,相続人の数が増加することに伴い,遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。
相続税の節税のために養子縁組をすることは,このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず,相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,併存し得るものである
したがって,専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。
そして,前記事実関係の下においては,本件養子縁組について,縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく,「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。

つまり、相続税を節税したいという目的で養子縁組をしようとする場合でも、動機はどうあれ養子縁組をするという意思はあるわけなので、養子縁組の無効事由には該当しないということです。

今回の孫の養子縁組の最高裁判所判例の詳細は、裁判所ホームページをご覧ください。

事件番号 平成28(受)1255
事件名 養子縁組無効確認請求事件
裁判年月日 平成29年1月31日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 判決
結果 破棄自判
原審裁判所名 東京高等裁判所
原審事件番号 平成27(ネ)5161
原審裁判年月日 平成28年2月3日
裁判要旨 専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない

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