尊厳死宣言書の作成
- 2017/2/26
- 2018/12/14
尊厳死宣言とは
尊厳死宣言とは、不治の病気や事故のため、医療によって完治・回復の見込みがなく、末期状態で死期が迫っている場合に、人工的な生命維持治療を行わず、人としての尊厳を保ったまま死を迎えることをいいます。
これを、「尊厳死(そんげんし)」や「自然死」と呼び、最近はメディアでも取り上げられるようになりました。
尊厳死を選択する
医学・医療の分野は発達を続けており、医療技術の進歩は日々前進ししています。
その中で、近代の医療を駆使して、患者の命があるならどのような形であれ延命治療を行う、植物状態になって意思表示ができなくても延命を図るということが、果たして本人が望むことなのかという問題提起が出てきました。
人工的にただ生きながらえさせるだけの過剰な延命治療は打ち切って、天命で自然な死期を迎えたいという方が多くなっています。
本人としても、自然な死を迎えたいというご意思もあり、末期にご家族へ大きな負担をかけたくないとの希望から、尊厳死を表明する方が増えてきています。
胃ろうを行うか
尊厳死に関する代表的な例として、たとえば、胃瘻(胃ろう)の造設を行うかどうか、ということで、ご家族が悩まれるケースなどが多くあります。
胃ろうとは、腹部に小さな口をつくって器具をつなげ、おなかから直接、胃に栄養を投与する方法です。
口から食事がとれなくなったり、飲み込むことができなくなったりした場合に行われます。
ご家族の方が認知症になってしまって介護している場合などに、胃ろうをするかどうかを決めるケースが出てきます。
胃ろうにもメリット・デメリットがあり、ご家族の方ではなかなか決断がつかず、迷い苦悩されることも多くあります。
ご家族の負担を減らす
延命措置を継続するか、中止して打ち切るか、ご家族の決断は大変重いものになります。
一度決断して実行したとしても、その後、自分を責め、後悔を引きずってしまう方もいるでしょう。
そんな愛するご家族の心の負担を軽減するためにも、尊厳死宣言書は有用だと考えています。
尊厳死宣言書とは
尊厳死宣言書とは、自分が延命のための治療を拒否し、尊厳死・自然死を望むという意思を表示する書面です。
生前に行う意思表示として、「リビング・ウィル」とも呼ばれます。
これにより、病院の医師等の医療関係者や、大事なご家族に対して、自分の意思を伝えることができます。
この尊厳死宣言の書面には、必ずそれを実行しなければならないという法律上の義務は課せられません。
しかし、一般財団法人日本尊厳死協会の調べでは、尊厳死の宣言書を医者に提示した場合に、9割を超える割合で、本人の希望が受け入れられたという調査結果があります。尊厳死に対する理解は医療の現場においては認知され、本人の意思が尊重される土壌があると考えてよいでしょう。
尊厳死宣言公正証書の内容
尊厳死宣言は、公正証書で作成することをおすすめしています。
尊厳死宣言公正証書の内容としては、以下の内容を記載します。
尊厳死の意思表示
尊厳死宣言として、不治の病などで完治する見込みがなく、末期状態であるときに、延命治療を行わないでほしいという意思を表明します。
また、苦痛を緩和する措置については行ってほしい旨も明記します。
- 死期が迫っている場合に、延命のみを目的とする延命措置を行わないこと
- 苦痛をやわらげる処置は、最大限行ってほしいこと
家族の了承・同意
尊厳死について、家族からの反対の意思表示があると、実現しないおそれがあります。
そこで、尊厳死について、家族の了解を得ていることを明示します。
医療従事者や関係者の免責
尊厳死宣言を行うにあたり、自らの責任におけるものであり、家族や医療従事者には一切責任が追及されないことをしっかりと記載しておきます。
尊厳死宣言の効力
尊厳死宣言について、将来、現実に死期が迫ったときに認知症になってしまったなど、そういったときに実現しなければ意味がありませんので、自ら撤回しない限り効果が持続することをうたっておきます。
また、作成後は、尊厳死の意思が担当医師にしっかり伝わるように、身の回りのことを見てくれる信頼できる家族に渡しておくとよいでしょう。
尊厳死宣言書の宣誓認証
尊厳死宣言書を公正証書として作成する以外に、
尊厳死宣言書を私署証書(私文書)で作成して、公証役場で宣誓認証を行うという方法もあります。
宣誓認証とは、公証人が私文書である私署証書に認証を与える制度です。
当事者が、公証人の面前で、文書の記載が真実であるということを宣誓して、署名(捺印)または、証書の署名(捺印)を自認します。
そして、その自認について公証人が公証します。
手続きとしては、公証役場で行う手続きですので、特段の事情がなければ、公正証書で作成する方法を選べばよいでしょう。
尊厳死宣言公正証書の作成費用
尊厳死宣言書(公正証書)の作成費用は、相続料金プランのページをご覧ください。
なお、尊厳死宣言作成の公証人手数料及び書類代として、別途15,000円程度がかかります。